「体のことを考えて、リュックに変えたんですよ。
 それなのに、ふとショーウィンドウにうつる自分が、驚くほど猫背で…」

姿勢の調整や指導をしていると、
ここ数年、よく相談いただきます。

パソコンを持ち歩く人。
荷物が多い人。
肩こりや腰の違和感が気になり始めた人。

理由はどれも納得できる。両肩に重さを分けられるし、
いかにも“体に良さそう”です。

なにより、私自身、「リュック」ユーザーである。

では、一体なぜ、体によさそうなリュックで、姿勢が崩れるのか。
実は、ここには圧倒的な体の使い方の違いがある。

今回は柔道整復師と鍼灸師の視点で、解説していこうと思う。

毎日重たい荷物を抱えながら頑張るリュックの皆様が、
すこしでも楽になったならば、嬉しい限りである。

体は「正しさ」よりも「倒れないこと」を優先する

リュックで猫背になるのは、意志の弱さではない。

実は、体のしくみとして、かなり自然な反応である。

リュックで崩れやすい人の姿勢には、だいたい共通点がある。

(横からみると)
首が前に出て、背中が丸く、肩が内側に入り込んでいる。
両手で紐を握りしめる人もいれば、若干膝が曲がる人もいる。

「ちゃんと体を考えている人」なのに、体の形だけを見ると、
少し無理をしているように見えるのだ。

ここには、リュックの重さと体のバランスの取り方が関与する。

実はさまざまな研究でも、リュックの重さが増えると、
体は無意識に頭や体を前に傾けてバランスを取ることはわかっている。

重たいものを背中に背負うと、体の重心は後ろに引っ張られる。
すると体は、「このままだと倒れる」と判断する。

そこで倒れないように、
一番重たい頭を前に出し、背中を丸めて、前に重心を持ってくるのだ。

これは、見た目は猫背でも、体にとっては「今、耐えられる姿勢」なのだ。

猫背になりにくいリュックの背負い方

では、結局リュックは姿勢に良くないのか。
ここまでくるとむしろそう思ってしまう。しかし、決してそうではない。

同じリュック、同じ重さでも、猫背になりにくい背負い方があるのだ。実際に私が意識しているのはこれだ。

① リュックは「背中に近い位置」で背負う

リュックは、できるだけ背中にぴったり沿わせる。腰の下にだらんと下がっていると、それだけで体は前に丸まりやすくなる。
目安は、腰より上・背中の真ん中。「重たいものが背中にくっついている」感覚があれば、
だいたい合っている。

② 肩ひもは「長くしすぎない」

肩ひもを長くすると、リュックは体の後ろで振り子のように揺れ、姿勢を崩しやすくなる。
背負ったとき、リュックの上のあたりが肩甲骨付近にくる長さが目安。
横から見て、背中とリュックの間に隙間がないか、一度確認してみてほしい。

③肩ひもは「親指側から・脇を締めて」持つ

ここが、一番見落とされやすいポイントである。

リュックが重くなるほど、肩ひもを前からぎゅっと握りしめたくなる。
けれどこの持ち方は、肩を前に引っ張り、胸を閉じ、背中を丸めやすい。

おすすめしている持ち方は、こうだ。

手のひらを前に向ける

親指側から肩ひもに手を入れる

脇を軽く締めた状態で握る

この形になると、脇が締まり、背中側の筋肉が使いやすくなる。
結果として、姿勢を「正そう」としなくても、背中が丸くなりにくくなる。

私も、駅までの道中で、走る時の手の位置もここである。
走るときも自然と体幹が効いて走りやすいし、荷物も揺れにくいので、おすすめである。

④ 荷物の重さは「体重の10%以内」を目安に

体は、重さには正直だ。
目安としては、体重の10%前後。
50kgの人なら約5kg、60kgなら約6kg。

そもそもこれを超えると、体はかなり頑張らないといけなくなる。
「毎日使っていない物」「一応入れている物」を見直すだけでも、体は楽になる。

私自身、荷物が多い人である。「もしも」を思うと自然と詰め込みすぎてしまう。
だからこそ、ガジェット類を軽量化してみたり、
本当に必要なものを見極める視点を持つこととも、毎日葛藤している。(永遠の課題)

⑤ 重たい物は「背中側・中央」に入れる

中身の配置も以外と重要である。最近ではPCを入れるポケットがついているものも多いが、これもわりと大切だ。

パソコンや本など重たい物は、できるだけ背中側へ。位置はリュックの中央〜やや上にくるようにするとよい。
外側や下に重さがあるほど、体は前に丸まりやすくなるので要注意である。

そして最後に、背負った直後に「一度だけ姿勢を整えて」みてほしい。

実は、リュックを背負った直後は、体が一番崩れやすい。そのまま歩き出すと、その姿勢が一日の基本姿勢になる。

背負ったら一瞬だけ立ち止まり、
・頭が前に出ていないか
・肩がすくんでいないか
それを確認するだけでも十分である。

体にいい選択は、「使い方」まで含めて完成する

リュックが悪いわけではない。むしろ、正しく使えば、
とても優秀な道具だ。あんなに重たかった荷物が、驚くほど軽く感じられるほどになります。

ただ、クライアントさんの相談を受けていて感じるのが、
体を大切にしている人ほど、体の反応を見落としやすいということ。

姿勢は、意識の高さではなく、体のしくみに沿っているかどうかで決まる。
肩と手の位置を、ほんの少しだけ変えてみるだけでも、姿勢は崩れにくくなるものである。

毎日大荷物で頑張るリュックのみなさま。ぜひ、ためしてみてほしい。

当院では、どんな症状でもまっすぐ立てるように
足から調整しています。

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